葛飾区金町の循環器内科|金町慶友整形外科・内科・こどもクリニック

循環器内科

担当医師

岩上直嗣(月-金)、小倉正恒(金)、南学(土)、丸目恭平(土)

循環器内科 診療時間

診療時間 日/祝
9:00~12:30
14:30~17:30

土曜日は専門診療を行っていない場合もありますので予めお問い合わせください。

当院は全身疾患管理の一環としての循環器診療を行います

当院は国立循環器病研究センター(大阪・吹田市)および心臓血管研究所病院(東京・港区)の連携施設です。
国内唯一の循環器病の国立高度専門医療研究センターである国立循環器病研究センター出身の専門医集団によるエコー・CT・MRIといった高度医療機器を使用した専門外来診療を提供することが可能である一方で、専門性は総合診療の中でこそ生かされるべきとの考えに基づき、あくまでもかかりつけ医として、皆さんのあらゆる健康相談にワンストップで対応し、慢性疾患の管理を行う中で隠れた循環器病に目配りすることを大切にしています。 心臓・血管の異常である循環器病は、全身臓器に関与し、頻度も高く、なおかつ生命に直結し緊急性が高いため、あらゆる状況で常に見逃してはいけない重要な鑑別疾患となります。無症状であったり、歯痛だけの心筋梗塞や、ぎっくり腰のような大動脈解離で突然命を落とすことがあります。一見無関係な症状で来られた時も、高血圧や糖尿病等の慢性疾患が一見安定して見える時も、可能性は低くとも命を左右する循環器病を専門医として見逃さないこと、無いなら無いと太鼓判を押すことが総合診療の基盤として重要だと考えています。 高齢化が進み多くの方が様々な併存疾患を有する中で、専門性に甘んじて循環器病だけを切り取って診る診療には限界があります。心臓・血管は全身の臓器と連携しながら血流を供給・回収する器官であり、全身の疾患を管理せずして循環器病の管理は成り立ちません。逆に血行動態が安定しないと各疾患の管理も困難となります。多様な併存疾患を其々の専門科で診る場合、誰かが全体を見渡し統率を取らないと、類似・相反する治療が行われたり、様々な診療科の狭間で結局誰も患者さんの全身を診ていない(ご自身は全身診てもらっているつもり)、といった深刻な弊害が生じます。 私たちは生命の根幹である循環器を専門とした総合診療医として、常に循環器病に目配せをしつつ、様々な専門家と適切に連携を取りながら全人的に全身管理を行うことを重視しています。

医学の進歩により循環器病と診断された後の治療成績はここ数十年で著しく改善しているにも関わらず、循環器病に罹る方やそれで命を落とす方は増え続けています。それはなぜでしょうか。急な麻痺や胸が痛い、といった明らかな症状が出れば誰もが病院にかかります。しかし多くの方が予兆に気付いていなかったり、浮腫みや息切れ、動悸があっても「年のせい」と考え病状が進行するまで受診しません。そうしたご自身でも気づかない僅かな異変を健診や一見無関係な総合診療の対面の機会で見逃さないことを私たちは大切にしています。普段医療と関わりの薄い健康な方(そう思っている方)に対しても、市民講座を通じて、来たるべき時のための正しいリスクの備え方について知っていただく機会を設けています。

循環器病の診療体系は医療の中で課題先進領域といわれます。元々古典的な医療情報に基づく疾患発症・重症化予測の精度が高く精密医療への親和性が高いという性質があります。さらに多くの方が罹患し命を落とす心筋梗塞や脳梗塞といった循環器病に対する有効な治療法が開発され確立し、それを提供する病院診療の高度化や均てん化が進み、さらに個別疾病対策としての社会で取り組むための法制度が整えられた現在、全国に1万人以上いる専門医の在り方として、既に発症・重症化した患者さんを病院で待つのみならず、アウトリーチ活動を広げ総合診療の枠組みの中で潜在的な病気を見つけ出し積極的に予防に取り組むべきであり、その事が今後の循環器病の制圧という社会課題解決の要と考えて実践しているのが当院の循環器診療です。

循環器病とはどのような疾患か

循環器病とはどのような疾患かイメージ

そもそも病気とは体の構造・機能の異常を意味します。循環器病は心臓・血管の構造・機能の異常、すなわち全身臓器に血液を届け回収するポンプと管の不具合により、各臓器血流の過不足を来し機能障害をもたらす疾患です。

血管が詰まったり、広がりすぎたり、破けたりして当該臓器に障害をもたらすのが、脳卒中 (脳梗塞・脳内出血・くも膜下出血 等)、虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞 等)、動脈疾患 (大動脈解離・瘤・閉塞性動脈硬化症 等)、静脈疾患(深部静脈血栓症・静脈瘤 等)、肺血管疾患(肺血栓塞栓症・肺高血圧症 等)といった疾患です。そして心臓のポンプ不調をきたした状態が心不全であり、ポンプが不調を来す原因として虚血性心疾患や、弁膜症、先天性心疾患、不整脈、心筋症、感染症(心筋炎・心膜炎等)などがあります。

下図は典型的な循環器病の臨床経過を示しています。縦軸は健康度を、横軸は年齢を表しています。 赤線の通り、高血圧や糖尿病などの生活習慣病・慢性疾患のある状態から、ある日突然心筋梗塞等の循環器病を発症し、なんとか一命をとりとめた後も心機能低下のため心不全を発症し、突然息苦しくなり救急搬送を要するような再発・増悪を繰り返しながら身体機能が落ち込んでいきます。癌の経過と比較すると、急な発症で緊急性を要する場合が多い事や、短期間で増悪を繰り返す事が循環器病の特徴です。対処が遅れれば遅れるほど元の状態に戻ることは難しくなります。

一方で後述の通り、循環器病は予測と予防がある程度可能な疾患でもあります。高血圧や糖尿病などの慢性疾患について、循環器病の発症を抑制するための手段としての視点から正しくリスク管理を行うと共に、発症・増悪を見逃さず適切なタイミングで適切な治療に導くことで病態が転がり落ちていくことを防ぐことができます。そしてこうした循環器病やそのリスクの管理は、健康診断や風邪の受診のように気軽な受診で速やかに行える医療環境が望ましいと考えています。

循環器病とはどのような疾患かイメージ

循環器病の症状が無くても常に疑い、見逃さない

こうした症状イメージ

典型的には胸痛、背部痛、浮腫、息切れ、息苦しさ、動悸、麻痺といった症状は循環器病を示唆する代表的な所見です。自覚があれば医療機関への受診をお勧めします。 しかし逆にこうした症状がなければ循環器病を心配する必要がないという考えは危険です。循環器病は上記の通り全身の臓器に不具合を来し得る疾患であり、あらゆる症状の鑑別に含まれる上に、見逃しが命取りになります。歯痛のみの心筋梗塞もあれば、無症状であったり、「年のせい」とみなされたまま発症・進行する循環器病も少なくないからです。私たちはご本人も気づいていない段階でこうした循環器病を見つけ出し早めに対処することを重視しています。それゆえ私たちは「循環器科」と大きく看板を掲げて排他的な診療を行うことをよしとせず、かかりつけ医としてよろずご相談を伺う中で循環器病を見つけ出す、あるいは逆に専門家として循環器病は無い、緊急性は無いと太鼓判を押した上で総合診療を進めることが大切であると考えています。

循環器病の治療

循環器病はポンプと管の不具合という比較的単純な疾患であり、その治療原理も単純です。

臓器の血流が不足すれば輸液等で補い、過剰なら除水や血管拡張を施し、血管が狭ければ風船で広げて金網(ステント)で再狭窄を防ぎ、血栓が詰まれば薬で溶解したり回収を試みて、それでも血流が確保できない、あるいは破裂しそうなら人工血管等で血管そのものを置き換えます。心臓は電気仕掛けで動いていますが、電気刺激が足りなければペースメーカーで外から刺激し、異常な電気回路で不整脈を来せば焼灼して切断したり、電気ショックで電流を整えたりします。心臓のポンプ機能自体が不調であれば補助人工心臓で心機能を補い、心臓移植という形で心臓そのものを交換する手段もあります。

循環器病の治療は世界中で研究開発が進み、治療技術も進歩し、さらに日本においては医療の均てん化の取り組みも広がり、どこでも高度な治療が受けられる体制が整えられてきています。 そうなると病院前後の診療の充実がより一層重要です。すなわちかかりつけ医レベルで循環器病を発症させないようリスク管理を徹底し、仮に発症しても早く見つけて最適なタイミングで最適な施設で最適な治療を受けられるよう道案内をして、治療を受けた後は増悪・再発を繰り返さないための綿密な管理を続けることが病院診療のさらなる充実をもたらします。こうした管理を行うことが当院の役割です。

一生に一度あるかないかの心臓の手術を受けるのに利便性は不要ですし、心臓の手術を行う医師は役割分担をして手術の腕を磨くことに専念すべきだと考えます。しかし、その前後一生涯にわたり続くかもしれない全身管理については利便性が必要で、また心臓を含めた総合診療的な全身管理が不可欠です。 例えば心不全とは心臓ポンプが全身臓器からの需要に応えられない状態であり、心臓だけではなく全身臓器の状態を管理することが必要になります。感染が加わったり心体のストレス等で血圧が上昇するなど様々な負荷がかかると数時間のうちに状態が変化することがあります。こうした管理を行うのに病院で丸一日待機して検査を受け、また一日がかりで診察を受けてということを何年も何十年も繰り返すのは大きな負担です。 さらに心臓以外の病気が疑われた時や併存疾患がある場合は、また別の科で一日がかりで検査を受けて診察を受けることになります。病院外来で枠組みが決まっていると、状態が悪くなり始めていても次の外来は何週間も先で、その間悪くなったら入院して診るという発想になりがちです。しかしこうした増悪入退院を繰り返すことは病態そのものを悪くするのみならず医療経済的にも大きな負担となります。 ちょっとおかしいなという時点で町医者にかかり風邪の受診と併せて血行動態の管理も受けることで、その晩に急な息苦しさで搬送される事態を防ぐことができるかもしれません。高度な専門診療と広範な総合診療が気軽に受けられる環境が現在の日本の医療には求められています。循環器病を早く見つけ全身管理を含め評価を済ませ、然るべき施設で必要な治療を受けたら戻っていただき、その後は心不全を起こさせないための綿密な全身管理を継続するというのが私たちの目指す診療です。

循環器病の治療イメージ

循環器病は発症・重症化を予測し予防することができる

日本を含む多くの先進国では医療水準や衛生環境水準の向上に伴い感染症や事故、栄養不全といった外的要因による死亡が減り、寿命が延びると共に癌や循環器疾患を含む非感染性疾患(NCDs)が主な死因となります。
あらゆる疾患は遺伝的要因と後天的要因から構成されますが、相対的にみて癌は遺伝的影響が大きく、発症・重症化を高精度に予測するためには遺伝子研究の発展を待つ必要があり、現状は公共政策としては癌検診で早期発見・早期治療に注力することが大切です。一方で、循環器病は、例えば高血圧や糖尿病がある高齢者において発症する可能性が高いことが古くから明らかとなっており、後天的要因の影響が相対的に大きく、発症や重症化をある程度予測しリスク管理を行うことで予防できることが広く知られています(https://www.jstage.jst.go.jp/article/circrep/2/1/2_CR-19-0111/_article/-char/ja)。知られているからこそ、多くの方が脳梗塞や心筋梗塞を発症し、麻痺が残ったり心不全を繰り返すようになってから、なぜリスク管理を怠っていたのかと後悔の念を抱き続けることになります。そうした方々を日頃診ているからこそ、一人でも後悔する方を減らすべく私たちは徹底したリスク管理を行っています。

循環器病は発症・重症化を予測し予防することができるイメージ

循環器病は個人や社会に大きな影響を及ぼす

循環器病は、国民の死亡原因として癌に次ぎ第2位で、年間31万人の国民が命を落とす病気です。命を落とさなかったとしても麻痺を残したり息切れを来すなど生活に及ぼす影響は多大で、要介護となる原因疾患として21%と最多であり、国民医療費に占める割合も最も高く約20%(年間6兆円)と経済的な影響も多大です。心筋梗塞や脳梗塞といった急性疾患が多いので救急搬送の原因としても16%を占め、患者個人や家族、社会に大きな影響を与えており、循環器病の制圧は医療の課題であると共に社会の課題でもあります。

循環器病を社会の力で征圧する取り組み

医療現場の役割は個々の患者さんに対して最適最善の医療を届けることにあります。 一方で届ける医療の質を高めるための研究開発や、その高度な医療を全国津々浦々全ての国民が適正な利便性と適正な支出で受けられるようにする社会の取り組みも大切です。 研究開発は世界中の研究者により個々に進められていますが、我が国としてどのような戦略で循環器病研究を進めていくべきかについて、関連学会が集まり5か年計画を策定する取り組みがなされ、その立上げには当院医師も関わっています(https://www.j-circ.or.jp/kihonhou_gokanen/)。

循環器病の上流にある生活習慣病に関する保健政策については健康日本21などが健康増進法の下で進められ、脳卒中や心筋梗塞に対する医療提供体制については医療計画制度の5疾病5事業の取り組みの中で進められ、高度医療の均てん化が進められてきました。さらに2016年に循環器基本法が成立し、これにより循環器病全体について予防から緩和ケアに至るまで幅広く、実態情報に基づいた自治体毎の循環器病対策が進められていくことが期待されます。

循環器病を社会の力で征圧する取り組みイメージ

循環器病の現状:治療成績は向上したが発症予防に課題

循環器病の治療成績は数十年で飛躍的に向上しました。

下のグラフ①は、国立循環器病研究センターにおける急性心筋梗塞入院の約30年の推移です(https://www.ncvc.go.jp/hospital/section/cvm/coronary/treatment-6/)。院内死亡は1978年時点では25%から2015年までに10%以下まで漸減しています。これは主にカテーテル治療の進歩の恩恵と考えられます。

グラフ②は日本循環器学会が行った全国1500余施設を対象にした2016-2020年の循環器疾患診療実態調査報告の公表情報(日本循環器学会:循環器疾患診療実態調査2019年報告書:https://www.j-circ.or.jp/jittai_chosa/media/jittai_chosa2019web.pdf)ですが、全国的にも院内死亡は8、9%となっています。ところが急性心筋梗塞を発症し入院する人の数は増加の一途をたどっています。心筋梗塞を発症した後は心機能が低下し心不全が問題となりますが、同じくグラフ③に示される通り心不全による入院患者数も右肩上がりとなっています。心不全による入院死亡も8%で、入院数と同じように入院死亡数も増え続ける傾向にあります。

循環器病の現状:医療の高度化・均てん化は進んだものの、発症者は増え続けているイメージ

循環器病の現状:医療の高度化・均てん化は進んだものの、発症者は増え続けているイメージ

循環器病の現状:医療の高度化・均てん化は進んだものの、発症者は増え続けているイメージ

循環器病対策の主体は病院から診療所へ

循環器病の診断がなされ病院に辿り着けば日本全国どこでも高度な医療を受けられる時代になりつつあります。 より有効な治療を目指す研究開発は今後とも進められていくべきですが、確実な次のステップとして、診療所レベルにおいて循環器病を素早く同定し病院診療につなげるとともに、発症させないための取り組みを強化することが大切です。

病院で循環器診療を行っていると、もう少し誰かが早く気付いてくれていればと悔しい思いをすることが少なくありません。後から振り返ってみると、ずいぶん前から循環器病を示唆する症状がみられていたのにご本人が「年のせい」と放っておいたり、肺癌検診のレントゲンで心拡大が進行していたり、心電図一つとっておけばもっと早く救えたのにということが数多くあります。 「後医は名医」という格言がある通り前医を非難するものではなく、上記の入院死亡8、9%を助けるために、そして発症そのものを予防するためにも、病院に搬送される前の総合診療や健診といった段階で循環器専門医が関わりに行くべきだと思うのです。とはいえ「循環器専門」と看板が掲げられていると、ちょっとした風邪や腹痛で受診するのに気おくれがしてしまいます。しかし実際には、風邪薬だけもらうつもりで受診したら重篤な不整脈で緊急対応が必要だったり、腹痛で受診したら大動脈瘤だったり、皮膚科の薬をもらいに来たら心タンポナーデでしたといった実例は当院において事欠きません。

こうした方々を確実に同定し助け出すためには専門医が排他的な専門診療に甘んじることなく広く総合診療に取り組む必要があります。そうした理由で当院ではこれまで循環器科の標榜を行わずに来たのですが、一方で専門的診療が可能であることも分かるようにしてほしいというご要望を多方面より頂戴し、本ページを作成するに至りました。

私たちの考えるかかりつけ医の在り方

病院主体で進められてきた日本の医療計画の先に診療所の診療の質の向上があり、その文脈の中で現在かかりつけ医の在り方が模索されています。 かかりつけ医の大事な役割の一つは答えを出すこと、答えを出す道筋をつけることです。

病気とは体の「構造」・「機能」の異常です。「構造」はX線、CT、MRI、超音波などで評価し、「機能」は採血や心電図、呼吸機能検査などで評価することができます。一般論として、患者さんは息切れ等の「機能」の異常を訴えて受診され、身体所見でも足のむくみ等の「機能」の異常は同定されやすく、検査も「機能」の異常の評価は広く行われます。 一方で「構造」の評価は疎かになりがちです。超音波検査には習熟が必要でCT、MRIは大きな設備が必要となることが理由です。大きな病院ではこうした設備があっても使う人が多いために必要な時に検査ができないことがあります。結果、施設のある病院においても「構造」の評価の欠けた診療に慣れてしまっていることは少なくありません。 例えば腹痛を評価する際に、採血・超音波・CT・MRIを駆使すれば、その場で正確な診断にまで至らなかったとしても、少なくとも腸・肝胆膵・泌尿器・卵巣子宮の中のどの臓器の異常で、緊急性があるのかないのかまでは速やかに判断し、必要に応じて然るべき機関に道案内をすることができます。「構造」が絞り込めないと、とりあえず痛みが強いからと大病院の消化器科に送られて1日がかりで受診し、検査に数日要した挙句にウチではないと帰され、次は泌尿器科に受診して、とたらい回しになっている間に病状が進んでいくことになります。 プライマリケアで速やかに「構造」と「機能」の評価を行い、答えを出せること、答えを出す道筋をつけられることが大切であると考えています。

私たちの考えるかかりつけ医の在り方イメージ

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  • 患者の気持ち